道連れの居場所

twst/ジャミネハ
7 おとぎ話/fairy tale 
『帰る場所/いつまで/幻』
ワードパレットよりお題をいただきました
「そんな幻にいつまで縋っているつもりなんだ?」
冷たく床に蹲る私を見遣る貴方の視線はさながら蛇のように鋭く私を貫く。呼吸が止まってしまったかのように苦しかった。的確に私の弱点を見抜いて毒を浴びせる貴方の言葉が大嫌いだ。でも、貴方の言うことは全て真実で。真実だからこそ辛いのだと気づいてしまった。
「幻なんかじゃ…」
「へぇ?親に金の為に切り捨てられたくせにまだ戻る気でいるのか?」
「それは…」
「帰る場所はないだろう?お前には」
しゃがみこんで私を覗き込むジャミル様の瞳が怖い。目が合うのがたまらなく怖い。歪められた口元が恐ろしい。恐怖が喉元までせり上がって歯がガタガタと震え出す。切り捨てられた私に価値などない。生きる意味など無いのだ。
「どうだ?俺に協力してみないか?」
「協力…」
「ああ。成功したら自由にしてやってもいい」
「なぜ、わたくしを…?」
「お前のユニーク魔法は役に立つ」
「役に…」
「俺が、お前に生きる意味を与えてやる」
これが童話なら、私は貴方の手を取ってはいけなかったのでしょうね。だって貴方は悪い人だから。きっと最後には誰かに罰を受ける。でも、私はどんな結末が待っていても帰る場所が欲しかった。
「ありがとうございます…ジャミル様」
差し出された手を取って蛇の双眸を見つめると、星一つない夜空のような瞳に密やかな炎が燃えて私に火を灯した。

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